2323 - 共感の蛹

ちいさいころ、寝る前に父や母に本を読んでもらっていた。ちいさなおうち、14匹のひっこし、などなど。 あるとき妹と一緒にびりっこ1年生を選んだ。その日は父が本を読んでくれる日だった。父は少し嫌そうに「これ泣いちゃうんだよなあ」と言いながら、びりっこ1年生を読んでくれた。運命走で転んじゃったなおこちゃんと一緒に仲良しのたえちゃんが走ってくれる、みたいなストーリーだった気がする。確か、終盤の、転んじゃったなおこちゃんと一緒にたえちゃんが走ってくれて、それをみていたみんなが応援してくれる、みたいなところで予告通り父は泣いた。涙を流しながら読んでくれた。父が泣くところなんて見たことがなかったので少しびっくりした。というか、大人は喧嘩したとき以外に泣かないいきものだと思っていた。母が父と喧嘩をしたときに、母が激昂して大泣きするところしか大人が泣くところを見たことがなかったので、不思議な感じだった。

あれから25年くらい経って、あっという間に大人になった。大人になったけれどわたしはよく泣く。なんにでも泣く。かなしいときもうれしいときも怒ったときも悔しいときもすぐに泣いてしまう大人になった。心が揺れ動かされると涙が溢れてしまう。きょうはラグビーW杯の日本対スコットランド戦を見て目頭が熱くなった。

そしてあの日のびりっこ1年生のことを思い出した。うちにはもうびりっこ1年生はないし、読み聞かせをしてもらうこともない。