0028 - 生活

1K6畳ロフト付き。東京に乱立するうさぎ小屋みたいな狭いアパートで暮らしている。去年の夏、わたしが思うペースでバンド活動ができない状態で、ひまで、でも音楽に関係すること以外にやりたいと思えることがあんまり思いつかなくて、でもギターを弾くのはどう考えてもそんなにすきじゃなくて、むしろ1人で弾くのは嫌いで、他にどうにかしてなにかできないかな〜と思って、DTMを始めることにした。が、DTMを始めるには7年選手のMacBookのスペックが明らかに足りなくて、思い切って21.5インチのモリモリにしたiMacを買った。24回払いのローンで。

ばかでかい本棚とベッド、ろくに見もしないテレビとおもちゃみたいなちいさなテーブルでわたしの6畳はパンパンだった。iMacを置くスペースなどなく、仕方なく物置きとしか使いようのないロフトに置いた。狂ったように曲を作った去年の夏。冷夏だったからか、空気があまり回らないロフトでもそこまで暑くなかった。平気で1日5時間も10時間もパソコンに向かって曲を作っていた。ギターを弾けなくても、ピアノを弾けなくても、パソコンがあればきもちいい曲が作れるのがたのしかった。

お金は全然持ってないし貧乏暮らしのジリ貧だけど自分がほしいと思ったものを自分が働いたお金で自分で買えることはうれしい。ぐんぐん世界が広がる気がする。だけ。

今年の5月末くらいに、けんちゃんとミキのことを書いたEPを作ることに決めた。曲は1つもできていなかったけれど、けんちゃんとミキのためのEPを作ろうと思った。最初に「走っていくよ」ができて、すごい曲を作ってしまったと思った。3曲か4曲入りのEPにするつもりだったけど、「走っていくよ」レベルの曲をあと2曲か3曲作る気力なんてないと思うくらい、すごい曲を作ってしまったと思った。諦めて過去の曲を何曲か入れてEPにしてしまおうかとか思いながら「宝物」を作った。作ってしまった。「宝物」ができたとき、またとんでもない曲を作ってしまったと思った。これはいけるかもしれないと思った。そして「そういうわけにもいかなさそうだ」ができた。最後に「夜のとばり」を作った。これはいけるだろうと思った。良い曲ばっかりできたから。

良い曲ができた。

良い曲ができたのに、ロフトでの作業は地獄そのものだった。ロフトじゃなくてもうサウナだった。サウナ。わたしはサウナでDTMをしていた。毎日毎日死ぬほど暑くて、クーラーをガンガンに入れてもロフトまで冷たい空気は届かず、サーキュレーターをつけても焼け石に水、しかも歌を録音するときはサーキュレーターの音をマイクが拾ってしまうからサーキュレーターさえ止めて歌わなければいけなくて、全然思うように歌えなくて、何度も何度も録り直した。大切なパソコンも、オーディオインターフェイスも、マウスさえも、暑さでアチアチになり、これは絶対に良くないと思いながら、だらだら汗をかいて、毎日毎日リフを打ち込み、ドラムを打ち込み、歌を歌い、延々とミックスをし続けていた。ちっとも終わりが見えなかった。毎日毎日、サウナでの作業がつらすぎて、果たしてこの曲たちは本当に良い曲たちなのかわからなくなって、メソメソ泣いたり酒を飲んだりしたりした。20回も30回もミックスをして、何百回もきいて、完成だと思える形に辿りつくまでものすごい時間がかかった。

その間、ずっとけんちゃんとミキのことを考えていた。途中で何度も何度も「これでもういいかな」って目をつぶって気づかないふりしてやめそうになったけど、けんちゃんとミキがいたから、最後までやりきれた、そんな、気が、する。

 

mkrdtsb.bandcamp.com

おととい、とうとうテレビという概念を捨てて、深夜に突発的に模様替えに踏み切り、階下のテレビがあった場所にiMacを設置した。クーラーの風も届くし、暑くないし、サウナじゃないし、最高かよ。なんでもっと早くやらなかったんだろう。その代わり金ローでやっていた時をかける少女はみられなかった。いいもん、プライムビデオでレンタルしてみるから。何かを手放して、そして手に入れる、そんなくりかえしかな。YUIもそういってた。